第二章 白石 彩乃

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『病気もしていない私が、後七日で死ぬ訳ないじゃない。やっと第一志望の大学に行けるだけの学力が身に付いたんだよ?夢も叶えられずに死んだりなんか出来ない。ってか私、子供相手に何をムキになっているんだろ……。あまりにもさっきの子供の発言が大人びていて、変に思いつめちゃったのかな……。もしかして、全部夢とかじゃないよね?』 自分の右頬をつねってみると、ジーンとした痛みが頬に広がる。痛みを感じると同時に、せっかく洗った髪が再び雨に濡れている事にも気づいた。今の出来事が現実だと教えるように、六月にしては冷たい雨が私の首筋を通って背中に流れていく。 この時、夏の始まりとは思えない妙な寒気を全身に感じる。それと同時に、私の心に掛かっていた鮮やかな虹は少し暗色に変わった気がしたが、少年の発言はただの悪戯だと自分に言い聞かせ、私は持っていた傘を広げて渋川駅へ向かった。
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