第一章 香川 慶太

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俺は教室から出ていく担任やクラスメイトの背中を、手のひらに顎を置き、ボーッと見送り窓の外に目をやった。厚い黒雲に覆われた空からは今にも雨が降ってきそうだ。一筋の光すら差し込まないような黒い雲。まるで俺の心の中を表しているようだ。 休み時間を迎えた教室の中では趣味嗜好が似たグループに分かれ、テレビの話やアイドルの話で盛り上がっている。腹を抱えながら楽しそうな顔で話をしている内容も、今の俺にとっては雑音でしかない。 この無駄な時間が一刻も早く過ぎ、誰も待って居ない家の扉を開く瞬間が俺の唯一の幸せであり、癒やしなのだ。
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