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平和で穏やかな風の吹く地方都市
ラスカード
自然豊かであるが、中心部はかなり発展しており、由緒ある学園が都市の看板となっている。
今、東の泉の畔で寝転び、浮島が浮いている空を見上げている青年、トレイズ・ルフィードもその学校に通う学生の1人。
ごく普通の、若干友達が少ない青年である。
「……ふわぁ~……ぁぁ……
……はぁ……、僕は平日の昼間に1人で何をやってんだろ……」
トレイズは溜め息を吐き呟いた。
制服を着てはいるが、別にサボりという訳ではない。
教員の会議とやらで、午前中授業だっただけである。
クラスの皆は喜び、折角の時間を有意義に遊びに費やしているが、トレイズだけは遊びに行く気にならなかった。
というより、誘われなかったのだ。
「……今頃、皆、開店したばかりのレストランとかで昼飯にしてるんだろうな~……」
トレイズは学生バッグの中から握り飯を取りだし、口に運ぶ。
彼はよくこの場所で空を見上げている。
ここは静かで、誰にも邪魔されることもない。
そして、何よりその時々で姿を変える自由な“空”を見るのが好きだった。
「……よし、明日は休日だし
今日は帰って勉強しよう
成績も少し下がってきたしね」
昼食を終え、寂しさを空を見てまぎらわしたところで、学生バッグを持ち立ち上がった時だった。
巨大な鳥が泉に突進するように落ちて、大きな水柱をあげたのだ。
いったい何が起きたのか、理解できなかったトレイズはその場でポカンと立ち尽くす。
「……えっと…… なんか帰りづらいな……」
多分、バドゥと呼ばれる家畜の一種だと思われるが、その種は泳げないため、泉に突進するのはあり得ない。
プカリと浮かんできたバドゥは傷だらけで、何かに襲われたと見て間違いないだろう。
「……とにかく助けておこう」
トレイズは上着を脱いで、泉に飛び込んだ。
近付くとバドゥの首もとに“シャロン・シルバッハ”というプレートが付けられ、背中には手綱が装着されていた。
「……まさか」
トレイズは泉の中に顔を入れた。
そこには褐色の女の子がゆっくりと沈んでいく姿が……
トレイズは直ぐ様、泉に潜って女の子の手を握った。
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