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アスラーカス国立ラスカード上級学校
ラスカードの中心に建つ上級学校。
この学校の卒業生というだけで、ある種、ブランドが付くとされるほどの有名校であり、その真向かいにある学生寮は充実した設備が備わっている。
トレイズは仮にもこの学校の2年生であり、今は寮生活を送っているのだ。
「……へぇ、意外といい部屋ね」
1203号室、トレイズの部屋に足を踏み入れたシャロンの一声はそれだった。
トレイズの部屋には小説がびっしり詰まった本棚と教科書が乱雑に散らばっている机、ベッドの他、キッチンやバスルームまで完備されている。
「ほんと…… 流石に2年間いたら慣れたけど
入寮した時はかなり勿体ないと思ったもん」
「実際に勿体ないじゃない」
溜め息を吐き、泉にいた時よりも疲れが増しているトレイズに鞭打つかのように追い討ちをかけたシャロン。
実はこの部屋に来るまでに、シャロンを背負うトレイズの姿を口が軽い寮長に見られ、必死に誤解を解いていたのだ。
結局、シャロンの冷たい罵りで寮長がダウンしたため、事なきを得たが、明日あたりには変な噂が立っていることだろう。
「……ねぇ、シャワーどこ?」
「え!? あ、そこの扉が更衣室だから!」
「うるさい そんな大声じゃなくても聞こえるっての」
緊張して声が上擦ったトレイズに容赦ない言葉を浴びせながら、シャロンはトレイズが指差した扉に入っていく。
「あ、待って! 着替えは」
「この中に入ってるから大丈夫」
慌てて引き留めたが、シャロンはバドゥが身に付けていた革のバッグを見せて扉を閉めた。
確かにあのバッグの中に入っていた包帯などは湿ってはいなかった。
防水加工済みなのだろう。
「……惨めだなぁ……
ことごとく好意が嫌がられてる気がするよ……」
トレイズはシャワーの音がするバスルームから少し離れ、濡れた制服から私服へと着替え始める。
「……はぁ…… 私、記憶が無くなる前もなんか……素直じゃなかったのかなぁ……
トレイズは悪くないって分かってるのに……
なんかスゴい申し訳ない気がする……」
シャワーの音にかきけされてバスルームの外には聞こえなかったが、シャロンは額を鏡に押し付け溜め息を吐いていた。
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