第2章: 追放

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「シャワー、ありがと」 バスルームから出たシャロン。 先程の服とあまり変わらない、薄手の白いズボンと足首まである長く白い上衣を着ている。 端から見ると褐色肌の美人の踊り子である。 トレイズはベランダの壁に寄り掛かり、下を向き、鞘に入っている剣を見ていた。 「……どうしたの?」 シャロンはそれに気付いて、トレイズにそっと近付き部屋の中で座って声を掛ける。 一瞬びくついたようだが、シャロンだと気付いて微笑みを浮かべるトレイズ。 「……久しぶりに剣なんて握ったなぁって」 「なんか嫌なことでもあったの?」 感慨深く呟くトレイズにシャロンは風でなびく茶髪を押さえ、再び訊ねた。 トレイズは答えずに立ち上がり、シャロンに剣を押し付ける。 「いや、家族のことが心配になってね」 シャロンはそれ以上聞くことはなかった。 ホームシックになることなんて、誰にでもあること。 記憶がない自分が“家に帰りたい”と思っているのだから、少なくともトレイズの気持ちは察することは出来た。 「……あ、シャロンも付いてきて 今から病院に行って、検査してもらおう? 記憶喪失の場合、頭を強打してることが多いらしいし 足も十分じゃないでしょ」 シャロンにとって、トレイズの気遣いはかなりありがたいものだった。 しかし、同時に同情なのではないか、と思えて素直に感謝することもできなかった。 「……分かったわ」 そう簡単に応え、シャロンは革のバッグを上衣の下に腰にベルトを巻き付け、念のために剣を胸に抱きトレイズを追った。 「あ、剣は要らないと思うんだけど……」 「これは私のなんだから別にいいでしょ」 トレイズの忠告に耳を貸さず、シャロンはそっぽを向く。 トレイズは、こればかりはかなり避けたかったが、記憶がないシャロンを心配にさせても仕方がないため、それ以上何も言わない。 2人は一緒に部屋を出た。
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