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毎度の事なのか早々に諦めた青空は、店主に追加のつまみとワインを頼んだ。若草はそれに便乗して生ビールを追加。つまみは青空のチーズを狙っているらしい。
この二人には決まった名前はない。ただ二人が着ている軍服の色で青空、若草と呼ばれていた。
この二人には名前なんて必要ないのだ。必要なのは、血沸き肉踊る戦場だけ。己の武器と、敵だけ。
いつでもどこでも戦を欲する【狂戦士】なのだ。
今はそのつかの間の休息に立ち寄った酒場でつまみのチーズを奪い合っているのだが。
そんな二人のテーブルに若い女が二人近寄り、声をかけながら青空と若草のそれぞれの隣に座った。
「青くん、今日はどこ泊まるの?」
「若くん。また戦の話、聞かせて?......ベッドの中で」
あまく絡みつくような声に二人は笑顔で応じると、店中から「そりゃないよ~っ」と声があがった。
「今日こそはこの酒場で武勇伝を聞かせてくれる約束だろ!?」
「もちろん飲みながらな!!」
サービスするぜ?と付け加えた店主のオヤジが熱々の唐揚げをテーブルに置いた。
しかし、軍服の二人は「悪いな」と謝ると声をそろえて言った。
「「カネがねぇから、すぐにでも次の戦に行きてぇんだ」」
どうやら全財産を今の飲食で使い切ったらしい二人は、唐揚げを女二人に譲った。
「それなら、あんたたち向けのイイ仕事があるぜ?」
そう言ったのは酒場の隅でひとりちびちびとお猪口で酒を飲んでいた男だった。
みすぼらしい衣服に無精ヒゲの男はかなり信用できそうにないが、仕事の話となれば聞かずにはいられない。
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