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今から行われる競技は、絆愛名物『棒起し』。
兵となる者たちが、敵兵との激しい肉弾戦を潜り抜け、敵兵の後ろの櫓で椅子に腰かけ手枷と足枷を着け身動きの取れない敵の大将の“肉棒”を起し、先に終了の号砲を発射させれば勝ちと言うシンプルな競技である。
しかし、シンプルさの裏で、たどり着いたとしても先に号砲を発射させることができなければ話にならない。使って良いのは己の肉体のみ…よって、ピンポイントを捉えた卓越した技巧、そしてもちろん肉弾戦を潜り抜けることができる強い者でなければならず、
また、大将に選ばれし者も、相手の術中にはまることなく、己の強い意志でその技を耐え抜き、真の漢の姿を見せつけねばならない過酷な競技。
この競技は校長自らクラス名が書かれた回転する的に、走る馬上から弓を射、当たった2クラスのみで行われる。勝ったクラスにだけ百点追加されるため、この競技で勝ったクラスがいつも優勝クラスになっている。
となると、どのクラスも選ばれることを願っているのは言うまでもない。
大将役の者は快楽に溺れぬように、また、兵となる者達は己の体や親しき者に協力してもらい高度な技を体得し、2本矢に選ばれることを今か今かと待っている。
校長が直江兼続の『金小札浅葱糸威二枚胴具足』、あの有名な“愛”の前立の甲冑のレプリカを身に纏い軽やかに馬に跨がった。 太鼓の音が激しく鳴り響く中、誰もが内心『似合わねえ!』とツッコミを入れたくなる姿で、『はっ!』の掛け声とともに 駆け出し弓を構える。
“タンッ”……“タンッ”
無駄のない素早い動作で見事に矢を射ると
「ぬわはははは…」
声高らかにご満悦で駆け抜けて行った。
「発表する。3年柿組と…1年芋組。両方のクラス は速やかに準備!1分後、入場門に揃っていなければ棄権とみなす。それでは、走れ!!」
それと同時に2つのクラスの生徒は全速力で入場門へ駆け出した。
遅れることなく全員集合し、いざ大将となる生徒を先頭に入場門より一糸乱れぬ“集団 行動”さながらの美しい絆愛行進で入場、それぞれの陣地へと向かった。
大将に選ばれた者は櫓へと上り、深く椅子に腰を掛け手枷と足枷をしっかり装着し、兵がそれぞれ位置に着いた。
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