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しばしの沈黙が流れ、彼の顔は真剣そのものに紫子を見つめる。
貫通力の鋭い槍で射抜かれているように、彼の目から離れられない。
やがて、数千数万の星たちから、祝福の薄紅色の淡い光が降り注ぐ。
…ジョルジュ♪…
…あなたは天使だったのでございますのねぇ!…
暗く薄汚れた路地は光り輝き、薄紅色に包まれ、その中をジョルジュが舞い踊る。
…これが恋というものなのでございますわねぇ…
いつしか冷たいアスファルトはフカフカの肌触りのよい最高級の芝生となり、秋の冷たい風も暖かな春のそよ風となっていた。
紫子は目を閉じる。
「ブーブブーブッブ…」
…じょるじゅ?…あなたは天使になっても「ブー!」なのでございますのねぇ?…
なま暖かい強い風が紫子のスカートをはためかせ
…紫子は…まだ…そこまでの…心の…準備は…できておりませんことよぉ…
と心の中でつぶやいた。
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