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…む・む・空しい…
雅直彦は目をつぶったまま心の中でつぶやく。
初冬の冷たい風が袴を揺らし竹林へと吸い込まれていく。
もはや何に悩んでいるのか?
何を望んでいるのか?
何がしたいのか?
自分を失いつつあるのだ。
生まれ持った男にはもったいないほどの美貌!
無駄というものを一切、受け付けない研ぎ澄まされた身体!
宇宙全体の英知を集めたような頭脳!
約束された将来!
使っても使っても増え続ける財産!
黙っているだけで寄ってくる美しい女たち…!
「…は~…」
ため息を一つついて目を開ける。
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