プロローグ

3/6

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/52ページ
「俺だって好きで金持ちな訳じゃないさ!言ってくれたら奢ったのに」 「それは遠慮する」 そう言い、友人の香取俊也は日替わりランチのパスタを口に運ぶ。香取は有馬が大学に入って最初の友人である。香取の家は祖父母の代から医者の家系らしく、それなりに豪華な生活をしている。 医者家系と言っても香取は医者になるつもりはなく、この大学に来た様だ。しかしながら、結構贅沢な暮らしをしている。 「良いバイト見つかったか?」 「いや、全く」 「やっぱり!そんなお前に取って置きの情報を教えてしんぜよう」 「キモい。良いから早く教えろこの坊ちゃま!」 そう言い、香取の脛を蹴りつければ痛ぇっ!と悲鳴を上げた。 「で、情報は?」 「お前!はぁ……言いますよ、言いますぅ!昨日の帰り道、何となく壁紙を見たら働く人募集中ってあったんだよ。時給は特に書いてなかったんだけど、一日一万稼げるとか何とか」 「何だそりゃ。怪しすぎるだろ、それ。どこの会社だったんだ?」 「確か“岸田相談所”って書いてあった」 「岸田相談所?聞いたこと無いな」 「俺も。まあ、貼り紙見て見ろよ」 「気が向いたらな。情報ありがとさん」 ごちそうさま。とお盆を持ち上げ有馬は席を後にする。香取が待てとか何とか言っていたが、気にせずお盆を返し食堂を出た。
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加