プロローグ

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帰り道、有馬は香取の見た貼り紙を見ていた。貼り紙の内容は香取が言っていたようなものだった。ただ、その貼り紙が貼られているこの道は余り人が寄りつかない街灯の少ない所。何だか気味悪いと思いつつ、住所を確認する。 「この道曲がってすぐ左のビルの三階?」 随分適当である。様子見だけでもしようと書かれている通りに歩くと、古臭いビルが見えた。 三階の窓を目を細め見るが、磨硝子の様で人が居るかどうか分からなかった。何となく中に入りたくなり、上へと続く階段を上る。 「岸田相談所……プレート汚いな」 インターホンが目に入り、ボタンを押す。反応が遅いのか少し間があってから中に響き渡ったのが扉越しで分かった。だが、いつまで経っても扉は開かない。もう一度押すが、やはり開くことはなかった。 もしかして留守なのかと思い、踵を返すと目の前に男が立っていた。有馬は驚き、思わず声を上げそうになった。 「何のようだ」 「え、あ……貼り紙を……」 「ふうん、あれを見て来たのか。……中に入れ」
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