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初日の金曜日。有馬は言われた通りに岸田相談所に来ていた。来ていたと言うよりも、待っているという方が正しいかもしれない。事務所の張本人である、岸田が昨日と同じ留守にしているのだ。
「鍵閉めて行けよ……。」
昨日もそうだが、鍵を開けたまま出掛けるとは物騒だ。万が一、空き巣が来たらどうするんだろうか。
「あの人訳分かんないな」
いきなり顔を掴まれたと思えば観察し始める。もしかして、アッチの趣味でもあるのだろうか。有馬は小さく咳払いをし、有り得ないかと周りを見渡した。
良く見れば、散らかっている気がする。資料は机に積み上げられ、カップはシンクに水付けられたまま。
有馬は眉を寄せ、立ち上がった。
「……仕方無い」
てきぱきと手を動かし、机の上を整理する。別に気になったからではなく、暇だからやるのだ、と有馬は自身に言い聞かせる。しかし、慣れているかのように見える動きは端から見ればそう言う性分だと思われるであろう。
「何をしている」
「う、わっ」
背後から声を掛けられ、手に持っていたカップを落としそうになる。首だけ動かせば、持ち主が怪訝な顔で立っていた。
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