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「何をしている」
「散らかってたので片
づけようかな、と……暇だったし」
「そうか」
そう言って岸田は座り心地の良い社長椅子にどさりと座った。有馬も引き続き、カップを洗う作業を再開する。全部洗い終えると、タイミングを見計らっていた岸田が声を掛けた。
「バイト、コーヒーを淹れろ。砂糖三杯だ」
「ああ、はい」
ふ、とシンクを見れば、適当に置かれたコーヒーメーカーが目に入った。有馬はそれを手にし、岸田にこれで入れますか、と聞いた。
「インスタントで良い。それは置いておけ」
「はぁ、そうですか」
インスタントコーヒーを差し出せば岸田はなにも言わずに受け取りすぐ口に付けた。有馬も特にこういう人間なんだなと気にせず、パイプ椅子に腰掛けた。
「今日は何かあるんですか?」
「ああ、まあな。もうすぐ来るだろう」
「そうですか」
重い沈黙。岸田は整理した資料からファイルを取り出し、じっと読んでいる。有馬は自分のコーヒーを口に付け、蛍光灯の移るコーヒーを見つめた。
砂糖三杯。てっきり岸田はブラックだと思った。人は見かけによらないとはこれを言うのか。有馬はまたコーヒーを口に含み、瞳を閉じた。
「……何ですか」
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