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「じゃあ病室の片付けしてくるよ、父さんも手伝って。」
「だからまだ退院はぁ…ああ」
半ば引きずられるように連れて行かれた父さん
暫く聞こえた懇願する声が完全に聞こえなくなった時
俺は後ろを振り向いた
「加賀…だよな。」
桜の影から見えた赤い髪
加賀は姿を見せる気は無いそうで、桜に背中を預けたままだった
「酷い目にあったって?」
「お陰様でな。まあ殺されずには済んだが、権利剥奪やらで金持ちから一転すっかり一般人だ。」
自嘲気味に笑った加賀
俺は気になっていたことを聞いた
「何で今まで律儀に騎士なんかしてたんだ?」
最後の最後に全部パーにしたのに
「言っただろ、信じるだけ信じさせて最後に裏切るのが」
「嘘だ…。」
「嘘なんかじゃねえよ。」
「加賀は俺を裏切った時、悲しい顔してた。
まるで残虐な自分を演じて自分を騙してるようだった。」
「…。」
殺されるって分かってるのに、あんなことしてあんな顔して
俺は拳を握りしめる
「……俺の事好きだった?」
桜が風に乗って俺の言葉と共に空高く舞った
「さあな…。」
気付けば加賀の姿は無かった
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