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――ドア閉まります。ドア付近のお客様はお気をつけください。
俺は途中になっていた読書を再開した。
電車内は通勤、通学ラッシュのため隣にいる小太りのおっさんの体臭が染み付くのではと思うほどの人口密度であったが、先程の出来事を少しでも忘れたかったため本の世界に逃げ込んだ。
ブレーキの度に人とぶつかるがそんなことは気にせずに本を読み続ける。
肩に人の手が触れたような気がするが気にしない。
叩かれたような気がするが気にしない。
掴まれたような気がするが気にしな……いや、流石にここまできたら無理だ。
掴まれている右肩の方向に顔を向ける。
同時に頬に何かが刺さる。
指だ、右肩を掴んでいる手からのびた指だ。
そしてその先には数分前に俺のブラックリストに登録されたばかりのあの女子がいた。
「もぉ~、ひどいですよぉ~。勝手に行くなんて」
GAMEOVER。俺の脳がそう終わりを告げた。
……しかしまだ俺は諦めない。
いくら脳が終わりという答えをはじき出したとしてもまだ諦めない。
なんかの漫画にも諦めたらそこで試合終了って書いてあったように、こんなところで俺の平穏無事なまったりライフを諦めてたまるか。
「僕はあなたとはいっさい……」
「きゃあぁぁぁ!!痴漢、痴漢よー!!」――
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