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「はいカーーーーットぉ!」
監督の声が私の耳に届いた。
私はその身を起こし軽く埃を落とす。
「いやぁ良かったよ! やっぱり流石だね! 君にこの役を頼んで良かったよ」
まん丸な顔に黒く染まったサングラスを掛けた監督が、にこにこと笑顔を浮かべながら言ってきた。
「いやいや。監督の手腕あってこそですよ。私なんてまだまだですから」
そう私は心にも無い事を言って監督を煽てる。
今後の仕事の為に少しでもゴマを剃っておいて損はない。
「いやぁ。嬉しいことを言ってくれるねえ。これは次の仕事もお願いするしかないかなぁ」
単純な監督だ。
さてと仕事も終わったしこのマスクともお別れだな。
そもそもこんなマスクしていたら、私の顔なんて一度も画面に映りやしない。
おまけに蒸れるし全くいまいましいマスクだったぜ。
「お? 取っちゃうのかい? なんか勿体無いねぇ」
「あはは……」
面倒くさいから愛想笑いで返した。全くこっちの気も知らないで呑気なもんだよ監督ってのは。
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