秋茄子嫁に食わすな

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今日はとても気持ちのいい秋晴れ。 あたし、真理子(まりこ)は義母のヨシノと一緒に野良仕事中。 去年、結婚しあたしは商社勤務を寿退社。 そして、旦那の実家の家業のお手伝いをする事になった。 旦那の実家は『農家』。 つまり、あたしは『農家の嫁』になったのだ。 「今年も立派な茄子がとれたわ~」 小休止をしながら義母とあたしはお茶を飲んでいた。 「ホント立派ですわ。 お義母さん」 どっさり採れた茄子を見てあたしは思わずニッコリ。 今日は田楽茄子にでもしようかしら。 他の野菜もあるし、何がいいかしら。 農家に嫁いでからあたしは献立を立てるのが楽しくてしょうがないのだ。 「真理子さんは今年が始めてだものね。 こんな大きなのびっくりしたでしょ?」 沢山採れた大きな茄子を見ながら義母は言う。 「ふふふ。 『秋茄子は嫁に食わすな』ってくらい美味しいのでしょ?」 ツヤツヤの美味しそうな茄子を見て、そういうことわざがあったなぁ~と思い出していた。 「そうだね。 昔の人はよく言ったもんだ。 これは単なる姑の意地悪さ」 義母は茄子を一本手にとりマジマジと見ている。 確かに。 嫁姑の社会が厳しかった時代にはあった話かもしれない。
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