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「あたし、お義母さんみたいな姑になりたい」
素直にあたしはそう思った。
「私みたいに?」
義母は驚く。
そりゃそうだよね。
フツー『お母さんみたいになりたい』って言うとこを『義母みたいになりたい』と言ってるんですもの、不思議だったのでしょう。
「はい!
豪快で心意気がある!」
あたしは意気揚々と答える。
「おやおや。
頼もしいね~」
嬉しそうに義母は微笑む。
「ふふふ」
義母の笑顔を見ていると何だかあたしも自然と笑みがこぼれた。
「真理子ー!
お母さん!」
遠くから男性の声が聞こえてきた。
「あ、正臣さん。
お帰りなさい」
あたしが振り返ると夫の正臣がこちらへ向かってきていた。
今日はトラックに不備があり修理に行っていたのだ。
「早かったね」
隣に座った正臣を義母はマジマジと見た。
「ん。
トラック壊れたと思ったけど、何かあっさり直ってね」
頭をポリポリかきながら正臣は苦笑いした。
「はい、どうぞ」
あたしは冷えた麦茶を正臣に差し出した。
「お。
サンキュ」
汗だくだった正臣は一気に飲み干した。
「農家の嫁も板についてきたんじゃないかい?」
あたしの行動を見て義母は嬉しそうに言う。
「そうだと嬉しいですね~」
板についてきた……か。
そう思ってもらえるのって、凄く嬉しい。
「俺の自慢の嫁だ。
当たり前だろ?」
そう言って正臣はあたしの肩を寄せた。
「もう正臣さんったら……」
正臣の言葉にあたしは顔を赤らめた。
「いいね。
私も昔を思い出したよ……」
遠い目をして義母は言う。
「お義父さん、きっと天国から見てくれてますよ」
そうだよ……。
きっと見ていてくれてる。
義母の事もあたし達の事も。
「そうだよ、お母さん!」
正臣も元気に言う。
「……ありがとね」
あたし達の言葉を聞いて義母は嬉しそうな顔をする。
土手から畑を見ているあたし達三人の顔に秋風があたる。
少しひんやりした風は何だか心地好かった。
これから先も幸せな家族でありたい。
嫁姑の戦争のない皆が笑って過ごせる楽しい家庭が築けたらいいなぁ……。
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