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ーー
裏山?
小さい頃遊んでいた裏山に何故か俺は佇んでいる。
そしてそのど真ん中にあるでっかい一本杉を見つめている。
ーー
『御主の願いは何だ?』
一本杉から女性の声が聞こえる。
……が、姿は見えない。
「は?
薮から棒に何だ?
アンタ、何者何だよ?」
辺りをキョロキョロ見ながら俺は尋ねた。
『私が何者か知りたいか?』
一本杉は俺に問う。
「いや。
興味ないッス」
マジ、どうでもいい。
ていうか、今の現状がわけわからない。
意味不明だ。
『おま……。
知りたいって言えよ。
物語的に!』
俺の返答に一本杉は焦る。
「……そこには触れるなよ」
うん。
触れたらいけないだろ……。
『ゲホゲホッ……。
持病のシャクが……』
俺のツッコミに一本杉は誤魔化した。
「嘘こけ。
さっきまでピンピン話していたじゃねぇか」
何か……。
コイツと話していると疲れてきた……。
『御主の望みを叶えてやると申してるのだ』
一本杉は偉そうに言う。
……木ごときに何が出来るんだよって話だ。
「俺は今が幸せだ。
望みなどない」
望む事はない。
俺は毎日が楽しくてしょうがない。
何も不自由していない。
これが今の俺の幸せの形なんだ。
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