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「絵のモデルになってくれないか」
僕がそう声をかけると、女は妖しげな笑みを浮かべ、軽々しく僕の誘いに乗ってきた。
僕の何が女達をそうさせるのかは分からない。だが僕の誘いを断る女は、殆どいない。
昔、僕の匂いが好きだと言う女がいた。
自分では分からないが、女を誘う匂いでも発しているのかも知れない。
そして女達は皆、僕の言うが儘に、秋の果実のように甘く熟れたその肢体を僕の前に晒すのだった。
静かな郊外にある僕の仕事場。
僕は身に纏う物を勝手に脱ぎ始める女に目もくれず、画材を広げ始める。
女は驚いたような顔で僕を見ると、
「ほんとに絵を描くの?」
と聞いてきた。
僕はチューブから赤い絵の具を絞り出しながら、
「勿論さ。その為に君を選んだのだからね」
そう答える。
「ふぅん……」
若干、面白くなさそうに、僕の手元を見つめる女に視線を向けると、画材を置いて近付いていく。少し緊張する女の横を通り過ぎると、隣の部屋に繋がる扉を開いた。
その部屋の床には、一面に独特の光沢を持つ黒いシーツが敷き詰められていた。
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