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「こっちだ」
その部屋を見た女の顔は、みるみる内に艶めかしさを増し、潤んだ瞳は欲望と期待とを孕んでいく。そして、僕に促される儘に、部屋の中央でその白い肢体を横たえた。
僕が女の上に覆い被さると、女は紅い舌先で自身の唇を湿らせ、僕の浸入を待つかのように薄く口を開いていた。しかし僕はそんな女の様子を一瞥するだけで、シーツの下に隠していた手錠で女を繋いでいった。
女は驚き、抵抗する素振りを見せる。しかし、その耳元の息がかかる程の距離で、
「任せて」
と低く囁くと、女はその白い肌を紅潮させ力を抜いた。そして、
「そんな趣味だったんだ」
と笑う。
僕は口元に薄い笑いを貼り付けると、女の口に猿轡を噛ませる。そしてそのまま、女の体のラインに沿って掌をなぞらせていった。触れてはいないが、僕の掌と女の体の僅かな隙間には確かに何かしらの反応があり、それが女を興奮させ、女の体は噎せ返る程の蜜の薫りを発し始めている。
その薫りを肺いっぱいに吸い込みながら、僕は傍らに置いていた“画材”を手にした。そして、それを女の柔らかな腹に静かに当てると、ゆっくりと沈み込ませていく。女の肢体は一瞬ぴくりと跳ねると、次にそこから流れ出す赤い体液と共に広がる痛みを、始めは恍惚とした表情で受け入れていた。
しかし、僕の掌に依って促されていた脳内麻薬は痛みに取って代わられたのだろう。僕の瞳に映る女の表情は、次第に恐怖へと変化していくのだった。
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