禾の火

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女が暴れるよりも早く、僕のよく手入れされた画材は女の腹を、内臓を傷付ける事なく綺麗に開いていた。 ルビーのように美しく光るその内部と、蜜の匂いとはまるで違う濃密な芳香。それは僕を興奮させ、まるで行為の後のように頭の中を痺れさせる。 僕は女の胸部にある柔らかな丸みを掌で包み込むと、悪戯に弄び始めた。すると、痛みのみを映していた女の瞳が、それとは別の色を映し始める。 そこには快感すらも見え隠れしており、更にはその瞳は、何処か違う場所を見詰めているかのようだった。 僕はそんな様子を眺めながら、次に胸部に画材を入れる。 更に女の体が跳ね上がるが、ずるりと、在るべき場所から在るべき丸みが左右に広がった時には、女は痛みとも快感とも、恐怖とも悦楽とも知れない表情を浮かべていた。 僕は別の“画材”を手にする。 医者である知人から譲って貰った物で、とても気に入っている物だった。 僕はそれに電源を入れると、女の丸みの下から現れた、美しい宝石を護るように存在する無骨な骨を取り除き始める。 女はその微かな振動に意味を為さない声を上げ、体は痙攣するかのように動いているが、既に意識の大半を手放しており、それはただの体の反応でしかないようだった。
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