禾の火

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女の美しい白い肢体と、それよりも美しく僕を魅了する赤い宝石。 黒いシーツの上でそれらは芸術的な美を以て、僕の脳内を刺激する。 僕の体は快感に打ち震えていたが、頭の芯は冷たく、静かにその細部に至るまで、全てを把握しようとしていた。 暫くしてから僕はゆっくりと動くと、最初に用意していた画材の前に立った。 そして筆を持つと、今、目の前にある芸術を余すところなく、白い画板に写し始める。 この美は一瞬毎に色褪せてしまう。 その前に全てを写してしまいたい。 いつもそう思うのだが、いつも失敗するのだ。 この色を、この瞬間を切り取る事は出来ないのだろうか。 次第に、蠢動していた赤い宝石はその動きに鈍くし、微かに聞こえていた女の呼吸音が止まると、緩やかにその動きを止めた。 途端に、僕を惹き付けて止まなかった鮮やかなそれは色を失い、僕の熱も褪めていく。 また僕は、唯一僕を興奮させ、惹き付けるこの美を手にする事は出来なかった。 僕の世界はまた、色の無い世界に戻ってしまった。 僕はまた、色を、芸術を求めて徘徊するのだ。 そして僕はまた、色褪せ、ただの肉塊に成り下がった女を、ただ茫然と見つめるのだった。
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