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「……。」
「悪かったな、ただ今日のの早水が誰だか知りたかっただけだからよ。
もう教室に戻っていいぞ。」
お湯がコップに適量入った事を確認すると粉を入れてかき混ぜる。
「……。」
「早水?」
いつまでも立ち上がろうとしない早水の隣にあたしは腰を下ろした。
「―――なぁ。」
「ん?」
「あんた、自分が誰か分かんなくなる時とか、あるか?」
ドクン、と心臓がざわめいた。
「―――自分が誰か…ねぇ…。」
そんなの、いつもわかんねぇよ。
今のあたしは沢山あたしがいすぎてわからない。
ましてや本当のあたしがどこにいるのかさえもわかんない。
だって嘘をつかないでいられる奴が、今はいないから。
「…オレは、いつもわかんねぇ。」
「……。」
「同じ身形した、同じ声で喋る兄弟がいて…。
いつも間違われて、いつも比べられて、いつも…。」
「……。」
「探してたんだ…オレ達の見分けが付く奴…。」
「……。」
「ちゃんとオレをオレだってわかってくれる奴、探してたんだ。」
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