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ズボンを握る手が少しだけ震えているように見えた。
あたしはココアをテーブルの上に置くと早水と向かい合った。
そして。
「いだ!!」
バチンと両頬を叩く。
「あんた、馬鹿だ。」
「ふぁ!?らりふんらよ!!」
両手はそのまま固定、頬を潰す。
「いいか?アンタはアンタなんだ。
他の誰でもない、アンタなんだ。
世界中どこ探してもいない早水和樹っつー、たった1人しかいねぇ人間なんだよ。」
「ふぁ…ふぁふぁへ!!」
「自分が誰か分かんなくなるなるときがあるだぁ?
そんなのあたしも同じだ。
生きてる人間全部がただ気づいてないだけで自分が誰か悩んでんだ。」
あたしはそっと頬から手を離した。
強く叩いたせいか少しだけ赤くなっている。
「人間一回はその問題にぶつかるんだよ。
気に病む事じゃねぇ、早水は早水和樹らしく歩けばいい。」
「…。」
「早水和樹は早水和樹だ。
それ以外にはなりえないんだよ。」
「つっ…!!」
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