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「紅さん!!」
「晃は黙ってろ!!」
「でもっ…!!」
逆上した兄貴を止めないと不味いと思ったのか晃は一歩踏み出した。
「黙ってろって言ってんだろ!!」
「っつ…!!」
兄貴の殺気に動けなくなっていた。
「姫、オレと目を合わせろ。」
「……。」
「姫。」
無理だ。
多分、今兄貴と目を合わせちまったら…。
「姫、大丈夫だから。」
今までに聞いたことがないくらいの優しい声。
いや、一回だけ聞いたことがある。
あれは蓮が死んだときだ。
「……。」
おそるおそる兄貴の目を見れば、眼が悲しみに染まっていた。
「蓮はもういねぇんだ。」
「……わかって…る…。」
「もう、会えねぇんだよ。」
「うん…ごめん…なさい…。」
もうこれ以上兄貴を困らせるわけにはいかない。
あたしはぎこちなく笑みを浮かべて兄貴に謝った。
兄貴はあたしの顔を見て少しだけ顔をしかめると優しく掴んでいた手を離し頭を撫でてくれた。
「本当に…ごめん…。」
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