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***
君が死ぬ。妹のユキが死ぬ。
その映像が脳裏を掠めた。やけにリアルで、今正に目の前で実現する。
――実現する?
ユキはどうやら、自分を犠牲にあの子を助けようとしている。僕はそれを純粋に嫌だと思った。
僕らの大切なものがなくなって、何年が経っただろう?
その時からどこか押さえられていた感情が、溢れだす。
僕は涙を流していた。
「これ、か」
あの憂鬱とした日々が走馬灯のように回る。胸が締め付けられるように苦しい。涙はずっと前から渇れていたはずなのに、止まることなく流れる。
―ああ、ユキ。分かったよ。
君のお陰で分かった。
"これ"はとても近くにあったんだ。
ただ、忘れていただけなんだね。見落としていた、だけなんだね。本当にばかだ、僕らは。……
涙で視界が眩むどころか、反対にクリアになって世界を美しくさせた。車があと少しに迫る。ユキは" "のためにそこを動かない。
コタエ
だから僕も、その想いのために君を守ろう。
僕は走り出した。
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