prologue

3/4
前へ
/22ページ
次へ
柳ヶ浦自由公園は大きな公園だ。 手入れの行き届いた芝生に、新緑の木立。 桜が見頃を迎えていて、たくさんの家族連れやカップルで賑わっている。 園内にある大きな池には、春の風に吹かれた桜の花びらが浮いていた。 風にあおられた花びらが、ひらひらと頭上に落ちてくる。 今年ははやく、散ってしまいそう。なんて、そんなことを考えていたとき、目に入った二人連れ。 たぶん、恋人同士。 女の人は、華奢で、髪をゆるふわな内巻きにしてて、大きな瞳で、すごく可愛い。 男の人は、すっと背が高くて、色素の薄い柔らかそうな髪。 後ろ姿だけどわかる。あれは絶対かっこいい。 でも、すぐに気づく。 公園中が幸せな雰囲気のなか、その二人のまわりの空気だけが、極寒のシベリアの冬のように凍っていた。 二人の人目をひく容姿と、周囲から完全に浮いている異様な空気に、近くにいる他のカップルや家族連れも、チラチラと視線を向けている。 どこかで、男の人の方を見たことあるような気がする、と思ったとき、“事”は起こった。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加