17人が本棚に入れています
本棚に追加
先生のまわりにはクラスの女子の半分、つまり十人くらいの女子がいて。その間をちょっと強引に通る。
誰かの間を通るたび、「先生の傍はわたしのよ!」とでも言いたげな視線を向けられる。
……目力が、正直こわい。
こっそり先生の左隣をゲットして、頬を見る。
先生が、いつもより甘えた調子で喋ってる女子の相手をしている、いまがチャンスだ。
近くで見ると、先生は肌もきれいだ。
キメが整っていて、健康的な肌色。
天は二物も三物も与えるらしい。ちょっとむかつく。
……ってそんなことじゃなくて。
目を凝らして、先生の左頬を見てみる。
顔のほかの部分と比べると、ところどころ微かに色が違う気がする。
一晩で、だいぶ赤みが消えたらしい。
それとも、必死に冷やして消したのだろうか。
頬に赤い手形をつけたまま、教壇には立てないだろうから。
冴えない表情で、頬に氷嚢をあてている先生が、頭に浮かぶ。
小さく吹き出したわたしの声は、教室のざわめきにかき消された。
最初のコメントを投稿しよう!