episode1

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先生のまわりにはクラスの女子の半分、つまり十人くらいの女子がいて。その間をちょっと強引に通る。 誰かの間を通るたび、「先生の傍はわたしのよ!」とでも言いたげな視線を向けられる。 ……目力が、正直こわい。 こっそり先生の左隣をゲットして、頬を見る。 先生が、いつもより甘えた調子で喋ってる女子の相手をしている、いまがチャンスだ。 近くで見ると、先生は肌もきれいだ。 キメが整っていて、健康的な肌色。 天は二物も三物も与えるらしい。ちょっとむかつく。 ……ってそんなことじゃなくて。 目を凝らして、先生の左頬を見てみる。 顔のほかの部分と比べると、ところどころ微かに色が違う気がする。 一晩で、だいぶ赤みが消えたらしい。 それとも、必死に冷やして消したのだろうか。 頬に赤い手形をつけたまま、教壇には立てないだろうから。 冴えない表情で、頬に氷嚢をあてている先生が、頭に浮かぶ。 小さく吹き出したわたしの声は、教室のざわめきにかき消された。
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