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「……で?結城はどうした。そんなに人の顔じっと見て」
先生が、いきなりわたしに話を振ってくる。
「あ、いやっ、そのっ、十四ページの最後のとこが……?」
「ああ、そこは…………」
他の生徒にするのと、まったく同じ態度。
顔色ひとつ変わらない。
先生は、昨日わたしに見られたことに気づいていないんだ。
そう確信して、ちょっとほっとした。
お昼休み。
お弁当を食べているわたしに、朝香が爆弾を投下した。
「てかさ、玲衣、今日どうしたの?あんなにナオ先生のこと見つめちゃって。もしかして、先生のこと好きになっちゃった?」
「えぇっ!玲衣、まじで!?」
美並まで食いついてくる。
ちなみに、ナオ先生とは、秋葉先生のこと。秋葉尚樹先生で、ナオ先生。先生ファンの女子の間で流行ってる呼び方。
わたしは、平手打ちされてたのが先生か確かめてた、と言うのは気が引けたので、ごまかす。
「まじで、じゃないよー。真面目に授業うけてただけだし」
朝香の追求は緩まない。
「だってー、授業の後も質問しに行ってたじゃん。いつもは行かないくせにぃ」
「それは、今日の授業の内容が難しかったから……」
「えー、絶対うそだー」
そうですよ。うそですよ。
だからって、先生のことが好きだとかじゃないんですよ。
でも、先生が平手打ちされたことをバラすのはちょっと……。
「うそじゃないって。教師とかないから。恋愛対象外だから」
そう言うと、朝香も美並も、「つまんなーい」って顔で黙った。
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