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「殿、殿ーっ!」
世界の中心の大陸の、海を挟んで東側。
弓なりに曲がった辺境の島国では戦乱が巻き起こり、いくつもの小国に別れて戦を繰り返していた。
魔物という人類共通の敵が少ないこの国で、人間同士で尚も殺し合うのは、何の定めか宿命か。
が、戦いを繰り返すその度にこの国の文化が発展して行くのもまた、真実なのである。
「殿! 殿おおお!」
「ええい、何じゃ騒々しい!」
殿、殿と叫びながら部屋に飛び込んできた男を、部屋で書を読んでいた大男が叱りつける。
この大男こそ、数ある小国の中でも特に有力とされる国の領主、サルタウズマサである。
坊主頭にひげを蓄えたその姿は、一国の主として相応しい威厳に満ち溢れていた。
「タダユキ! お前はこんな夜中にどたばたどたばたと……! 廊下を、走るなあああっ!」
「し、しかし殿……今すぐにお耳に入れておきたいことが……」
ウズマサに平伏しているこの男は、サルタ家の重臣、エンヤタダユキ。
戦で武勲を上げ、若くして出世した精鋭だ。
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