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携帯を開き、懐かしい番号を躓きながらも打った。
決定ボタンに少し戸惑ったけど、覚悟を決めて押して携帯を耳に持っていく。
「(プルルル……………)」
コールが鳴り、久しぶりに話す相手に少し緊張したのか、手が少しだけ汗ばんできた。
「プルルッ………………はい、もしもし?」
『………っ』
「もしもーし?」
変わらない、少しも変わっていない。
『もしもし…………、母さん?僕が誰だか…わかる?』
「…………」
『かあ………さん』
「わかるわよ…………十里ちゃんでしょ?」
『……っっ』
少しの間が挺した後、聞きなれた母の声が少し震えて聞こえてきた。
ほんとは聞くのが怖かった。
誰?って言われたらどうしようって思ってたから。
「十里ちゃん?」
10年ぶりに聞く優しい母さんの声。
全てを包んでくれるみたいな、優しい優しい僕の大好きな声。
『母さんっっ、覚えててくれたっ』
思わず声を大きくして言ってしまった。
電話の奥で、息を飲む音がした。
「っっ…………忘れるわけないじゃない!!ずっと待ってたわ!!」
その言葉に耐えきれず涙が出てきてしまった。
頑張ってたえてたのになぁ…………
『ありがとう、母さん』
素直な気持ちが口から零れた。
でも一番伝えたかったのはこの言葉じゃない…………
『母さん』
「どうしたの?」
『ただいま』
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