―――プロローグ―――

2/2
18人が本棚に入れています
本棚に追加
/28ページ
携帯を開き、懐かしい番号を躓きながらも打った。 決定ボタンに少し戸惑ったけど、覚悟を決めて押して携帯を耳に持っていく。 「(プルルル……………)」 コールが鳴り、久しぶりに話す相手に少し緊張したのか、手が少しだけ汗ばんできた。 「プルルッ………………はい、もしもし?」 『………っ』 「もしもーし?」 変わらない、少しも変わっていない。 『もしもし…………、母さん?僕が誰だか…わかる?』 「…………」 『かあ………さん』 「わかるわよ…………十里ちゃんでしょ?」 『……っっ』 少しの間が挺した後、聞きなれた母の声が少し震えて聞こえてきた。 ほんとは聞くのが怖かった。 誰?って言われたらどうしようって思ってたから。 「十里ちゃん?」 10年ぶりに聞く優しい母さんの声。 全てを包んでくれるみたいな、優しい優しい僕の大好きな声。 『母さんっっ、覚えててくれたっ』 思わず声を大きくして言ってしまった。 電話の奥で、息を飲む音がした。 「っっ…………忘れるわけないじゃない!!ずっと待ってたわ!!」 その言葉に耐えきれず涙が出てきてしまった。 頑張ってたえてたのになぁ………… 『ありがとう、母さん』 素直な気持ちが口から零れた。 でも一番伝えたかったのはこの言葉じゃない………… 『母さん』 「どうしたの?」 『ただいま』
/28ページ

最初のコメントを投稿しよう!