第二話〓おそうじ〓

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(あいつ、何か壊したな!) 玲子は立ち上がったそのままの勢いで居間へと向かった。   バタバタバタ……ガチャ。 「……!」   居間はたしかにきれいになっていた。 ただし、テーブルの上だけ……。 「おっかたづけ♪おっかたづけ♪みんな一緒におっかたづけ♪」 そんな風に歌いながら、みかんはテーブルの上の物を次々と弾き飛ばしていた。 「やめんかぁ!!」 叫び声と共に放った回し蹴りはみかんの後頭部を直撃し、彼女を地に這わせた……。   ミーミーミー……。 みかんは、頭のこぶを押さえ泣き続けていた。 「それで、あんたの言う『綺麗にする』っていうのはこの事?」 みかんは綺麗になっているテーブルを見て言った。 「……ちがうんですか?」 みかんの答えに玲子は頬を引きつらせた。 「あんたねぇ。」 床の上は惨たんたる有様だった。 醤油差しは中身をじゅうたんの上に撒き散らし、花瓶は床に落ちてバラバラに砕けている……。 みかんはこめかみに青筋を立てている自分のマスターの顔を不思議そうに見つめた。 「かずさんは喜んでたのに……。」 玲子は、みかんが師匠に追い出された理由を今、本当の意味で理解した。   「あらあらあら……。」 ビクッ。 玲子はその声に恐る恐る振り返った。 「これみかんちゃんがしたの?そぅ……じゃあ、責任はレイちゃんが取ってくれるのよね?」 こめかみに怒りマークを張り付け、にこやかにそう言う母の言葉に玲子はただうなづくしかなかった。 「じゃあ、今夜中にね♪」 そして哀れなマスターは真夜中までかかって、じゅうたんの染みを落とす羽目になったのだった……。   〓つづく〓
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