24人が本棚に入れています
本棚に追加
第三話〓スキーと温泉🎿前編🐱
ガラガラガラ……。
ポトッ。
カランカランカラン……。
「おめでとうございます!特賞は湯けむりスキ-旅行二泊三日四名様ご招待!」
福引き所のおじさんはにこやかに笑いながらそうのたまわった。
……かくして、玲子は正月を北国のとあるスキ-場の近くで過ごすことになった。
同行者は父、母そして、居候のみかんである。
「マスタ-、マスタ-!スゴイですよ!まわりが真っ白です!」
列車の外の景色にみかんはやや興奮ぎみだった。
周囲の目も気にせず一人で騒ぎ続けている。
「みかん、いいかげんに静かにしたら?」
「だって、雪がこんなにたくさんあるんですよ!」
「……雪くらい見たことあるでしょう?」
「そりゃぁありますけど……でも、故郷ではこんなに積もるのは滅多になかったんですぅ~。」
みかんは瞳をキラキラさせながら答えた。
「へぇ~。じゃあ、ひょっとしてスキ-とかもしたことないんだ。」
「はい!」
みかんは元気いっぱいで答えた。
「……ところで『すきー』って何ですか?」
ズルッ。
みかんの答えに玲子はずっこけた。
「なにか知らんのに『はい!』とか答えるな!」
「へへっ♪」
マスターのツッコミにみかんは照れた様に笑った。
そんな風にしているうちに列車は刻一刻と目的地に近付きつつあった。
もちろん、そこに何が待ち受けているかその時の彼女たちに知る術はなかった……。
「ヒャッホウー!」
到着の二時間後……。
玲子とみかんは宿の近くのスキー場にいた。
みかんはどうやら運動神経は良いようで、玲子が教えるとすぐにコツを覚え、一時間もするとあたりを自由に滑っていた。
(猫の妖精というのは伊達ではなかったか……。)
もはや、コーチしていた玲子よりもうまく滑り始めているみかんの後ろ姿を見送りつつ、彼女はそう一人ごちた。
「マスター、早く早く!」
玲子はみかんに手をあげて応えると斜面を滑り降り始めた……。
「じゃあ、そろそろ上の方にも行ってみるか?」
「はい!」
みかんはそう答えるとさっそくリフトの方へと向かい始めた。
「マスター、あっちの方が空いてるみたいですよ!」
そう言うが早いかみかんは人の並んでいないリフトの方に駆け出して行った……。
最初のコメントを投稿しよう!