24人が本棚に入れています
本棚に追加
久し振りのスキーで玲子も少し浮かれていたのだろうか?
リフトにだれも並んでいないことに何の疑問も抱かず、彼女はみかんと一緒にリフトに乗ってしまった。
二人乗りのリフトが彼女たちをグイッと持ち上げる……。
『超上級者コース』
玲子がその看板に気付いたのはその時だった。
「しまったぁぁぁ!!!」
しかし、もう後の祭りだった。
(誰か止めてくれぇぇぇ!!!)
だが、そんな彼女の心の叫びは誰にも届かずリフトは間抜けなマスターをマヌケな妖精と共に山頂へと運び去った……。
ゴー……。
(耳元を吹き抜ける風もさすがに山頂だけあってひと味違う……。)
そんな間の抜けた感想を抱きつつ玲子はこれから滑り降りるコースに視線を移した。
「マスター、ほんとにこんなとこ滑れるんですか?」
「……。」
コースは上から見ると絶壁と変わらなかった。
(先が見えない……。)
彼女は言葉を失った……。
そんなマスターをみかんが不安そうに見つめる。
「……下りのリフトに乗りましょうか?」
みかんが恐る恐る尋ねた。
「そんな恥ずかしいことできるか!」
「でも、こんなところ降りれません!」
「元はと言えばお前が超上級者用のリフトに乗ったせいじゃないか!」
その言葉にみかんは涙目になった。
「だって……マスターだって乗るとき何も言わなかったじゃないですか。」
(……グッ。)
なかなか鋭い指摘だった。
「とっ、ともかく、降りるしかない!行くぞ!」
「……でも、こんなところ滑れません。」
みかんはもうすでに半べそをかいていた。
「馬鹿だなぁ、誰が滑って下りるって言った?」
「は?」
「スキーを脱いで、歩いて下りるんだよ!歩いて!」
「……ああ!なるほど!それならきっと大丈夫ですね!」
そう言うとみかんはさっそくスキー板を靴から外し始めた。
しかし……。
「あれ?」
「どうした?」
「あの……靴がスキー板から外れないんですけど……。」
「えっ?どれ見せてみな……あれ?あれ、ほんとだ。」
みかんと私は顔を見合わせた。
「ど、どうしましょう?」
「……仕方ないからそのままゆっくり横向きに下りていくしかないんじゃない?」
「そ、そんなこと……私、出来ません!」
「大丈夫だって。」
しかし、みかんはもうすっかり混乱状態だった。
(参ったね……。)
最初のコメントを投稿しよう!