ドッペru原画ー ノ 肆

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『その通りだ。階段は学校という施設のなかで、かなり事故や怪我に繋がりやすい場所だ。転落すれば最悪、うっかりと命を落としかねない。人はそういった事故が起こりやすい場所や、危険な場所に、自分の不注意や物理的な設計ミスを考えながらも、何か他の謂れを想像する。理不尽な事故や怪我、人の死に対して人為的な問題では納得ができず、認められず、やがてそこに人外の存在を求め、望まれ、空想し、怪談は生まれるのだよ』  ほんの一例に過ぎないがね、と付け足したところで、僕達は階段を登り切る。  どうやらこの上にも、合わせ鏡があるようだった。  ドッペルゲンガー事件の浸透性が高いのは、この鏡の多さから始祖の怪談を引用しやすかったからなのだろうか。  ドッペルゲンガーは、そうやって生まれるべくして生まれた怪談なのかもしれない、などと勝手な憶測を立てながら、 「階段を登り終えたぞ、これからどうする?」 『そうか。今君達がいるのは、旧校――棟の三階、そ――端だ。そ――もドッペル―、ガーの目撃証言があった場所―が、な――見えるか?』 「身空木、声にノイズが混ざりだした」 『ん、おかし――、まだそ――距離で―ないはずだ――が』 「ここからどうすればいい? 一度戻るか?」 『そう――な、できれ――こから、隣にあ――棟へ向かって欲しい、少しいった先に渡り廊下がある、そこ――向かってくれ』 「隣の棟へ行けばいいんだな?」 『――だ』  どうやら隣の校舎を目指せばいいとのことだった。 「ねぇあいつ、なんか急にヤル気になってない?」  削雛さんが、トランシーバーを介さずに、後ろから訪ねてきた。 「そうですね、なぜでしょうね、気紛れな奴ですからね」  恐らく理由はアレだけど、絶対に削雛さんには言いたくありません。
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