ドッペru原画ー ノ 肆

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「まぁいいわ、ドッペルゲンガーがいるって事を前提に動いてくれてるみたいだし」 「僕はあれが、実はなんらかの夢幻だったらと切に願います、いえ、その希望は捨てません」 「はい?」 「いえ、なんでもありません、それより冷え込んできました、大丈夫ですか?」 「確かに大分冷えてきたわね……もうちょっと厚着してくればよかったかも」 「これが無事に終わったら、またコーヒーでも煎れますよ」 「……そうね、お願いするわ」  しかし女の人は、どうやってこんな薄着で寒さを堪え忍んでいるのだろうか。  主に下半身。  特に両脚。  少しなれつつあるのが嫌になるけど、スカート姿というのは見た目通りにかなり寒いのだ。  僕もスパッツなり、タイツなりの防寒を考えたが、もちろん持っていない。身空木に頼むのも癪で、妹の物を漁ってもあまり良いセンスの無かったため、仕方なく現状に甘んじている。  ……いやいや、これじゃまるで女装に前向きみたいじゃないか、僕。  悪影響、これは悪影響だと角を曲がって渡り廊下へと出た所で、歩みを止めた。  また、止めてしまった。 「…………あぁ」  渡り廊下の向こう。  その端に、丁度僕と同じタイミングで、  まるで息を合わせたかのように、  人影が二人、出てくる所だった。 「……嘘だろ」  先日言い損ねた台詞を、今更ながら呟く。  そしてふと、あの、嘘吐きの言葉を思い出すのだ。   『この学園に、怪物なんてものが存在するわけないだろう?』  あの、何もかもを飲み込むような、何もかもを嘲笑するような、何もかもを蔑ろにするような微笑みで言った、身空木の言葉を、思い出す。  あの時は僕も食事中だったから、ついついサボりがちだったと反省しつつ、僕がいつものように何かを言えば、きっと彼奴も、いつものように言ってくれたのだろうと思う。  ――嘘だよ。                       知ってるよ。  と、  なぜなら、僕の向こうに、確かに居るのだ。  二人組、芸術科指定の紺色ブレザーに、チェックのスカート。  遠くても、見間違うはずのないツインテールと、ショートの黒髪。 「出た、わね」  本当に出た、出てしまった。  瓜二つのもう一人。 「みたい、ですね」  二重存在。  二重の歩く者。 「……ドッペルゲンガー」
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