ドッペru原画ー ノ 肆

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 まったく同時に、向こうも同じような事を呟いたように見えた。  表情はしっかりと見えない、だがそれでも、きっと僕達と同じ表情をしているのだと、確信があった。  なぜなら、あれは……僕だからだ。 『出――か!』  あれは、確かに僕だ。 『シュウ? ―ュウ! 返事を――!』  見間違うはずがない。  幾度も幾度も、鏡で見た。 『返事をするんだ! シュウ!』  そして何度も呪った、 「あれは僕のようだ」 『違う! あれは――じゃない! 呑まれるな! いいか! それ以上絶対に――くんじゃないぞ! 私が行くまでじっとしてろ!』  あれは、彼は、彼奴は、僕は、まるで鏡の向こう側だ。  削雛さんが、僕へと手を伸ばしている。  振り返れば、また僕も振り返り、見ればこちらの削雛さんも、僕の手を握っていた。 「あれは……あんたじゃない、しっかりして、あいつの正体を暴くんでしょ」 「でも、あれは……削雛さんと僕だ」 「違う、あれはあんたじゃない、あんたはここにいる、ここにいるのよ――シュウ」  削雛さんの視線が、目が、 「『あんたが本物の、シュウでしょ』」  声は二つ、  でも眼球に写るのは、僕、僕ただ一人。 「『だから、アレを捕まえて』」  写るは僕、 「『そして――……殺して』」  僕、ただ一人。 「…………――はい」  振り向き、振り向かれ、互いが互い、互いは互いを、見つめ見据えて見つめ合う。  削雛さんの手をしっかりと掴んで、踏み出し、寄り合う。 「『お前は、僕の偽物だ』」  インカムから声が聞こえる。  だけど、こんな物がなくても、わかる。 「『違う、お前が僕の偽物なんだ』」  僅かなズレもなく、同時に呟き、同時に歩を進める。  僕達は、手を繋ぎ合ったまま、向き合い、近付き合う。 「『――僕が、本物だ』」  向かわなければ、  近づかなければ、  捕まえなければ、  だから、だから、だから――  そして、そして、そして―― 「『僕が本物の、――――だ』」  その時だ、  「  “其処迄だ。双方、動くな ” 」  場面が再び異常を孕み、影を生み出した。   §   §   §
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