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混濁する、煩雑と歪み、歪んでは墜ちる、下るように、流され墜ちる。
暗闇で胎動する、ここが走馬燈の始発地点。
記録の検索を開始します。
参照、エラー、参照、エラー、参照、エラー、
検索に該当する情報はありません。
僕はこの記録を思い出したくありません。
参照、エラー、参照、エラー、参照――ヒット。
僕は生まれた。
取っ手のない引き出しに入れておいたはずの、古い記録が、斬られた首より吹き出し、想起する。
これは確か、救いようの亡い、幼い頃の話。
これはそんな、愛の記録。
母の記録は、苦く、酸敗したような、血の味だった。
父の記録は、痛く、痺れるような、血の味だった。
好き嫌いはイケマセン、それが母の口癖だった。
母は若くして博愛主義者だった。
隣人を友愛し、
他人を信愛し、
外敵を悲愛し、
善も悪も、良しも悪しきも、オケラもミミズも、全てを寵愛することができる人だった。
母は弱く、優しい人だった。
好き嫌いはイケマセン、それが父の口癖だった。
父は若くして敵対主義者だった。
隣人を憎悪し、
他人を嫌悪し、
外敵を唾棄し、
善も悪も、良いも悪しきも、オケラもミミズも、全てに敵対することができる人だった。
父は強く、厳しい人だった。
僕は神様の奇跡を信じます。
僕はそんな二人の間に生まれた奇跡を信じます。
僕はそんな神様の奇跡を信じます。
僕はそんな二人の間に生まれて、きっと幸せだった。
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