ドッペru原画ー ノ 肆

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 所々涙で歪みながらも綴られた言葉を見て、僕は初めて、身体から全てを吐き出した。    何もかもを、吐瀉する。    何もかもが、裏返る。    全てを嘔吐する。    逆流する胃液が食道を焦がし、涙が額を伝い、吐瀉物の中で転げ、叫びながら吐き出し、    そして僕は愛を失った。    母は、僕を愛してなどいなかった。    母は、母ではなかった。  全ては、偽り。  全てが、詐り。  何もかもが嘘だった。  僕は吐きだした、全ての嘘を、全てを詐りを、身体から追い出したくて。  今まで得てきた全てを、今まで取り入れてきた全てを、飲み込んできた全てを。  そして最後には、何もかもを吐きだして、空となった僕が残った。  そんな僕を見て、父は言った。 『  “若かった頃の母さんにそっくりだよ” 』  本当の母親の写真を、僕に見せながら、そんな事を言った。  僕は、その日、その時、初めて父を殴りつけた。  思いつく限りの暴力を行使した。  どんなに吐きだしても、  どんなに裏返っても、  刻まれた暴力だけが、空となった身体には残っていたのだ。  拳で殴り、  棒で打ち、  熱で焼き、  刃で切り、  歯で噛み、  愛のない、意志のない、ただの暴力が父の全てを痛めつけた。  妹は、それを見て笑っていた。  そして、僕はこの奇跡を、神の所行を、呪った。  そして父も唯一の愛を失って、痩せ細り、病み朽ちて、すぐに亡くなった。  その後、僕達は親戚一同に追いやられるように、薊ヶ原にある施設へと預けられた。  人とし扱うには、僕達は――してしまったのだと。  季節を追い、年月を数えて、僕等は御影ノ学園の学生になった。  父さんと、母さんと、あの女が出会った、学園の生――なった。  その年の春。  僕は、夕暮れ――教室で、一匹の――と出会ったんだ。  それから、――で、僕は、たし、か……――。   §   §   §
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