ドッぺru原画ー ノ 壱

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 半端に暖かな風を受けていたせいか、やけに寒く感じる屋上へ、そこから部室の外壁を伝うように進むと、冬の渇いた空気にエンジンオイルの臭いが混ざりだす。  到着した部室外の脇、そこで低い唸り声を上げ続けているのは、小型の発電機。  ガソリンを燃やし、エンジンを回して発電を続けるコレのおかげで、部室には電源が調達できている。電源を付け、リコイルスターターと呼ばれるグリップを勢いよく引くとエンジンが動き出して、電力を供給する仕組みらしい。  これぞ文明様々、電気電流大明神様。  だけど、そんな神様への信仰が持てない魔王の配下であるらしい僕は電源を一捻りした。 「―っ!! んぎゅああああああああああ!?」  部室からは、世界も文明も失った不細工な猫のような叫び声が聞こえてきた。  文明も今や一捻りで息の根を止めることができるのだから実に他愛ない。  清々しく溜飲も下がった所で部室へと戻ってみれば、スフィンクスの型を解いて、ただべったりと寝そべった猫と化した身空木が消沈していた。 「おお、勇者よ、死んでしまうとは情けない」 「…………」  返事が無い、ただの嘘吐きのようだ。 「それで、何をしてたんだよ」 「………………」 「おおい、身空木? 行儀が悪い身空木さん?」 「…………うえだすみ るなぜしせちと めるちざぜ ねらび」 「はい?」  うつ伏せたまま何を言い出すかと思えば、何を言ってるんだ、こいつは。 「はい、ではないよ復活の呪文だよ、君がもし本当に王だと言うのなら私の勇者を生き返らせて見せろ、今すぐだ、私の三時間、三時間だぞ、その苦労を返してくれ……」    くぐもった涙声での訴えは、どうやら呪文か何かだったらしい。  というか、つまりはこいつは昼から授業をサボってここにいたことになる。 「また部費で余計な物を買ってきた奴が言える台詞じゃないだろ、何枚食券使ったんだよ」  部室は余計な私物でスペースのキャパシティが既に逼迫した状態にある。  これ以上私物を増やしたのなら、そろそろ本格的な抗議活動を考える頃合いだ。
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