ドッペru原画ー ノ 肆

23/44
前へ
/142ページ
次へ
 首が落ちる瞬間が、まるで自分の事のように思えた。  僕はどこから“自分の首が落とされた”のだと、錯覚したんだ。  同時に僕の意識も落ちていったのを、僅かながらに覚えている。 「おや、それはすまなかったね。しかし見事な物だ、ここまでずっぱりと人の首を切断できる怪談などそうは居ないだろう。目的は、畏怖を集めるための注目稼ぎといったところか。確か、怪談、十六代目、“骸落とし”君、だったかね?」  一体どれだけの時間、気を失っていたのか。僅かな時間だとしても、だとすれば、身空木がすぐさま此所へと駆け付けてくれた事に、僕達は命を救われた事になるのだろうか。  身空木に命を救われた……。  ……生きた心地がしなくなってきた。 「解っているのなら、その首も置いていって頂こう」 「それは困る、解っていると思うが、私は君と違って普通の人間なのだからね」 「このような時間に、校舎をうろつける人間が普通なわけがないだろう」 「いやいや人間だよ、私はまだしっかりとした人間だ、ただの人間だ、正直者な人間だ、お節介な人間だ、だからね、恐らく怪談としてもまだまだ若くて、ルールの一つも解っていないのだろう君に一つ忠告をさせてくれないか?」 「……忠告?」 「そう、忠告だ。君はやり過ぎた、見たまへよ」  言われるがまま、今度は眼鏡武者が足下脇の死体へと視線を落とした。    言葉を押し込み、身空木が眼鏡武者の言動を縛り始めている。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加