ドッペru原画ー ノ 肆

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「こんな所で人の首など落とせば、どうなると思う? 確かに大きな事件だ、話も膨らむだろう。だがね、大きすぎるんだよ。人間の、それも学生の首を刎ねる怪物が学内にいるとわかれば、学園側が放っておくわけがない。この学園にはこういった時に動く、特異怪談対策室と呼ばれるものがある」 「か、怪談対策室……?」 「そう、その中で実行部隊にあたる特異風紀委員達からの咎めはまず避けられないだろう。この二人の死体が見つかれば、すぐにでも君は追い詰められる事になるだろうさ」 「……このような事をしたのだ、何の咎めを受けずにいられるとは最初から思ってなどいない」 「ほう、腹は座っているというわけか。随分と珍しい奴だ」 「なぜ俺がこのような怪談に”取り憑かれた”かは解らん、だが、この怪談と共に風化し、忘れ去られて消え失せるくらいなら、生まれた意味を斬り付けて消えるも、この怪談の本望。案ずるな、痛みなど無く、思う間もなく、生に縋ることすらできないまま、その首、落として進ぜよう」  意識がようやく足下まで伸びるのと同時に、僕も身体を起こし、すぐ背後で倒れて気を失っている削雛さんを見た。  僕と同じようにドッペルゲンガーの首が落ちるのを、自分の首が落ちたように錯覚したのだろうか。 「あぁまったく恐ろしい怪談だ。そこの死体を見る限り、君にならそれも可能なのだろう。で、このまま私の首を落として、後ろの二人の首も落とすか?」 「無論だ」 「はん、”阿呆が”」  嘲笑を込め、極めて冷徹な声で、身空木が眼鏡武者を切り捨てた。  見なくてもわかる。その顔は、きっと笑っている。いつもの顔で、笑っている。 「……聞き捨てならんな、この俺が阿呆とは」 「阿呆を阿呆と言って何が悪い? 貴様は死んでもなおらない阿呆だ。いいや、“貴様等”は阿呆だ。どいつもこいつも、自分の怪談を高める事しか頭に無くなり、それ故に視野が狭く、事の成り行きを想像できず、結果だけを追い求める愚か者だ」 「戯れ言を……その首、もう不要と見なすが、よろしいな」 「冗談ではないよ、これは“商談”だと言ったはずだよ」
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