ドッペru原画ー ノ 肆

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「なら……ならば、どうしろと言うのだ! ……俺は、どうすればいいんだ」  激昂が眼鏡武者の心中を押しつぶしたのか、絞り出すような声が出た。  眼鏡武者の両手が、膝が、力んで震えている。 「知るか、私達を斬り殺したければ斬り殺せばいい、だがその行為は畏怖を他の怪談の糧とされ、お前は学園に追い詰められ惨めに消え去るだけだ。潔く消えたいだけなら腹でも切って勝手に死ね。その怪談を“誰かに託して”一人で死ね。そして私達を巻き込まずに死ね」  その言葉が、止めとなった。    完全に足下を掬われる形となったのか、構えを解き、腕をだらりと下げた。    いや、というか……。 「……くっ、うっ」  ……泣き出しちゃったよ……眼鏡武者さん。  なんで男子高校生を泣かせてるんだ、現役女子高生(偽)。  だけどそれでも、こんな状況では、きっと誰も彼の味方にはなってくれないのだろうと同情を禁じ得ないけど、やっぱり僕も助ける気にはならないのだった。    …………だってほら、男だし? 「――と、言いたいところだが、怪談の本義は畏怖の高さではない、そう言ったな?」   身空木が、歩を進める。ゆっくり眼鏡武者の間合いの奧へと足を踏み入れた。 「なら、お前にはまだ私との商談の席に座る権利がある」  恐れる事無く、言葉も止めることなく、ゆっくりと近づいて、そして言うのだ。 「この私が、お前を救済してやろうじゃないか」  救済、ここに来て身空木は救済と言った。    
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