ドッペru原画ー ノ 肆

28/44
前へ
/142ページ
次へ
「……救済? なにを」  さっきまでの立場を逆転させ、今度はこっちが命を助けると、身空木は言った。 「なに簡単な事だよ。お前は何も言わず、聞かず、今はここから去れ。この死骸の掃除から、有効活用まで、何から何まで私が段取りをつけてやろう。私達は一命を取り留め、お前はこれからも怪談の高みを目指す事ができる。どうだ、悪い話ではないだろう?」  最後には眼鏡武者の横に立ち、少し背伸びをしてその耳元に唇を這わせるように寄せ、一言、二言と呟いた所で、眼鏡武者がなぜか今一度涙を流し、顔を伏せた。 「これが双方にとってこれが最良の選択だよ。気にすることはない、大丈夫だ、安心しろ、私はお前えと違って思慮深く行動をする人間だ。お前を騙したりなんかしない」  極めて艶めかしく、耳奧へ擦りつけるような甘ったるい声、同時に、 「私は正直者だからな」  相手の肩へと優しくを手を乗せた。それと同時に、相手の首が縦に折れ、それをもって了承の合図と取ったのか、 「商談成立だ、またご贔屓に頼むよ」  そして嘘吐きは、振り返って、またいつものように微笑んだ。  特異怪談対策室とか、  特異風紀委員とか、  もちろん、そんな物は初耳だったけど、今は何も聞かないでおくことにした。  聞いたところで、なんて返されるかなんて、容易く想像できるのだ。                             ――嘘だよ、と。   §   §   §
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加