ドッペru原画ー ノ 肆

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 まずは暖めたフライパンにオリーブオイルとバターを伸ばし、スライスしたニンニクを滑らせ少し炒める。  大雑把に切り分けた肉を投げ入れ、全体に焼き目がついたらタマネギ、セロリを投入し、しんなりするまで炒めて、最後に赤ワインを流し込む。    ……というか、学生が赤ワイン持ってたら駄目なんじゃないだろうか。    などと、気にしていたら煮立ち過ぎるので、その前に材料を圧力鍋に入れて、ローリエ、トマトの水煮、塩と胡椒、水の順に加えて、蓋をしっかり閉めたら強火で圧力をかける。  密封する事により、圧力をかけて沸点を高める圧力鍋は、煮込み系料理の強い味方。  時間のかかる煮込み肉料理も、これのおかげで比較的短時間に、それも柔らかく仕上げる事ができる。  煮込み終わるまで火加減を見守りながら、付け合わせのサラダを作っている最中、身空木が上気した身体と頭にバスタオルを巻き付け、戻ってきた。 「しっかりと作っているようだな。……それにしても惚れ惚れする程にエプロンが似合っているな、君は」  一応、男同士とはいえ、裸で現れない所を見るに、少しでも常識がある事に一安心していたら、付け合わせように茹でて殻を剥いておいたゆで卵を一つ摘まれ、それを口にくわえたまま、 「かみほかわかひてくふ」  と、自室の方へと消えていった。  ……本当に卑しい奴だ。  圧力鍋を見守りながら、さて、手の空いた時間を利用して状況を整理する。  結局、眼鏡武者が消えた後も、僕は身空木の指示通りに動いただけだった。  自発的に行動する気力が無く、何もかも言われたとおりに行い、そのまま気絶した削雛さんを背負って、僕等は身空木を残して校舎から抜け出した。  当人だけは、まだ色々とやる事があるのだと校舎に残った。
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