ドッペru原画ー ノ 肆

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 別れ際、夜も深け、時間も遅いとあって、このまま削雛さんを自宅に送り、これにて解散かと思われたが、身空木は削雛さんの自宅を知らないと言ったのだ。    僕はてっきり身空木と同じマンションに住んでいると思っていたが、どうやらそうではないらしい。    仕方ない、致し方ない、こんな所に置いていくわけにもいかない。    風邪を引いたら大変だ、暴漢に狙われた大変だ、盗賊に襲われたら大変だ。    それでは目が覚めるまで僕の自宅で、自室で、ベッドでちょっと横になって貰おうと足早に校舎から出て、帰路へつこうとした背中を身空木に引き留められた。    その時の表情は、なんだかとても恐い笑顔だったと、記憶している。    後は、身空木の家の鍵を渡され、風呂の支度と、炊事場の片付けと、洗濯物の回収をしろと命令され、首は縦にしか振ることを許可されなかった。    そのまま身空木の自宅へと歩いて向かうことになり、薊ヶ原唯一の高級マンションに到着した時には、日付を跨ぐ直前となっていた。  身空木の家には、これまでに何度か入った事がある。  守衛のおじさんに部屋の鍵を見せて中へ、閑散とした寒さはエントランスで一度絶たれ、エレベーターで上っては四階端部屋、身空木の家へ入った。  まずは削雛さんを客室のベッドへと横にして、暖房で部屋を暖めてから、廊下へと出た。  廊下に据えられた電話で我が家へと電話を掛ける。  妹に今夜は帰れるかどうか分からないと告げ、もしもの場合は明日の朝食を自分で準備するように頼み、この妹殺し! とキレられた所で、僕も電話を切った。  する事はまだある。  急いで冷え切った洗濯物をしまい込み(これがまた、全て女物)、炊事場に貯まっていた汚れ物を撤去、洗浄、整頓とすませて、風呂場へ。  無駄に広い風呂場は、楽に三人が入浴ができるものだ。  気合いを入れて掃除を行い、満足ゆくまで磨き、終わってリビングに戻ると、身空木が丁度冷蔵庫に何かを押し込んでいる最中だった。  その後の事は、現状の通り。  丁度、シチューも完成した頃合いを見計らったのか、皿に盛りつけて並べたのと同時に、白黒ストライプのゆったりとしたコクーンワンピースに着替えた身空木と……制服のブレザーを脱いだ削雛さんが一緒にやってきた。  
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