ドッペru原画ー ノ 肆

33/44
前へ
/142ページ
次へ
「……わかった、その代わり情報に足る分のコーヒーを煎れろ、愛を込めてな」  愛の持ち合わせは無いけれど、雑務担当に恥じないコーヒーを煎れると約束し、キッチンにて準備にとりかかった。 「それで、どんな話がお望みだ?」 「全部よ」 「それは料金不足だ」 「追加料金ならまた食券で払ってもいいわ」 「残念ながら、ここから先の話は食券では買えない」 「……だったら、話せるところだけでいいから」 「では、我が家の雑務担当がコーヒーを煎れるまでの時間で、話でもしようか」  だったらゆっくりと煎れるべきかとも思ったけど、コーヒーの温度は上がりすぎても、蒸らしすぎてもやはり駄目だ。約束通り、普通に湯を沸かしながら、普通にコーヒーミルを取り出して、棚奧に置いておいた紙袋から豆を取り出し、流し込む。 「ではどんな話から聞きたい?」 「あれから一体、なにがあったのかを、聞かせて」 「私はお前達からドッペルゲンガーの報告があってからすぐに駆け付けた。駆け付けたら、そこには胴体から離れた首が二つ、そして首が離れていない人間が二人、そしてその二人目がけて刃を抜こうと構えるマフラー姿の日本刀男がいた。そして彼を止め、交渉し、商談し、約束を取り決め、その場で帰っていただいた」 「交渉したって……自分で言うのも変な話だけど、相手は人間の首を切り飛ばすような、イカれた殺人犯でしょ?」 「失礼な事を言うもんじゃない。今回の彼は殺人犯ではなく、ただ”怪談“を殺した”怪談“だよ」  などと言われて、あぁそうかなるほどと納得できるわけもない。
/142ページ

最初のコメントを投稿しよう!

55人が本棚に入れています
本棚に追加