ドッペru原画ー ノ 肆

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「勿論、納得がいく説明をしてくれるんでしょうね」 「納得? おかしな事を言う。この学校に怪談という怪物が存在していると最初に認めたのは、他でもないお前じゃないか」 「それは……、じゃぁあれもドッペルゲンガーと同じ、怪物かなにかの類ってことなの?」 「君達が見たのは、“一六代目の骸落とし”という怪談だよ。その“怪談という事象に取り憑かれている人間”でもあるがね。そして彼は話としては古いが、怪談の担い手としては新参者だった。その内、どこぞの怪談に喰われるか、組み敷かれるか、取り込まれるかするだろうさ」 「……その口ぶりからして、あんた、最初からこの学園には、あんな怪物達がいるって知ってたのね」 「部外秘というやつでね」 「……何がお前は怪物の存在を本当に信じられるのか? よ、この嘘吐き」 「酷い言われようだ、そんな事は初めて言われたよ」もちろん嘘だ。  挽き終えたコーヒー豆を、ペーパーへと流し込んで軽くならす。 「あんた達、本当は何者なの?」 「正義の味方だよ」これも嘘だ。 「……この学園の絶対厳守の校則や罰則は、この事を世間から隠すため?」 「いいや、違う、あれは理事長の趣味だよ」とうぜん嘘だ。 「あの怪談は……怪談達は一体どうして存在しているの?」 「その昔、偉大な魔法使い達が人間の願望を抽出し、事象とし、具現化させ、さらにそれらを他者に憑依させる事で、誰でも強大な力を扱うことができるようになる、そんな研究を始めた。しかし魔法使いは途中で研究に飽きてしまった。放棄された計画を日本の秘密組織が発見する。第二次世界大戦の折り、この異形の力を軍事計画へと組み込んだ。しかし計画はやはり頓挫。夢見がちな学生達を材料とした馬鹿げた実験は半端な形で凍結し、戦争は終結され、あとに残った強大な願望達は怪談へと姿を変え、今も生徒の身体に取り憑いて、事象の体現を、願いの成就をかけて夜な夜なと行動している」という、嘘だ。 「…………あんた、本当の事を話す気ないでしょ」 「うむ、ない」あ、これは本当だ。
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