ドッペru原画ー ノ 肆

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 海の底へ向けて押し込もうとする両手が、僕の両肩を掴み、絞られていく。    そこには痛みがあった、明確な痛みが。    でも、そんな事は些細な事で、どうでもいいことで、そんな事より、削雛さんの両目から流れ出す透明の滴が、僕の頬を打った。    明確な恐怖、感情の隆起、吐き出される熱を孕んだ液体が、頬を伝って、落ちてくる。  削雛さんは、真実を求めている。  真実の確証を求めている。  自分が本物だという、存在証明を、こんな僕なんかに。  「本当の事を言って……シュウ」  鋭く、穿つように、僕の顔を叩く涙。  僕が嫌いな、僕の顔を叩く度、その熱が塗りたくっていた、“嘘”を溶かそうとする。  真実を求める涙が、僕の嘘を、食い破ろうとしていた。 「――私を見て」  やめてください。  やめてください。やめてください。やめてください。    僕にそんな事、わかるわけないじゃないですか。    僕にそんな事を求めないでください。    今の僕は、まだそんな事は知らないんです。    知らないんです、わからないんです、今はまだ、そういう人間(セッテイ)なんです。    だから、僕に真実なんて問わないでください。 「 私達だけが本物だって、言ってよ……」  そんな目で僕を見ないでください。  そんな目で僕を写さないでください。  僕は、僕が、嫌いなんです。  貴女が覗こうとしている、写そうとしている、僕の奧にあるモノが、僕は嫌いなんです。  貴女まで、知ろうとしないでください。  僕の嘘を、除かないでください。  どうだっていいじゃないですか、本当かどうかなんて。  僕には、僕には、僕には、  ―― “ ぼく ”には、 「  “蒐”  !」    “ 貴女が偽物かどうかなんて、どうだっていい ” 「――やめて、ください」  これ以上は、駄目だ。
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